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先天性梅毒と思われる患者にみられた鼻腔内逆生歯の1例
加藤 智至
1
1浜松赤十字病院耳鼻咽喉科
pp.571-573
発行日 1962年7月20日
Published Date 1962/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202876
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緒言
歯はまれに正常部位とは違つたところに埋伏していたり,萠出したりすることがある。このような歯を転位歯といい,その状態を異所埋伏ないし異所萠出という。上顎の歯はその局所解剖学的関係から転位する傾向が強い。上顎転位歯のうちで鼻腔や副鼻腔に萠出するものは,大体において歯冠が上方,歯根が下方を向いているので,その方向は一般の上顎歯とは反対になる筈である。このように反対方向に生えた歯を逆生歯と称える。
最近当病院の外来を訪れた患者に鼻腔内逆生歯を見た。患者は充天性梅毒を思わせる顔貌を呈していた。内外の文献を調べて見ると,鼻腔内の逆生歯は甚だ珍らしいという程ではないが,まだその成因も知られていないような現状にかんがみ,何かの参考になればとの念願から,簡単に報告して見ようと思う。
A displaced tooth was found to be erupting into the nasal cavity. The patient was a man aged 42, who was affected with congenital syphilis which resulted in destruction of the nasal septum and saddle nose since the age of 3. By X-ray examination the displaced im-acted tooth was shown to be the right canine.
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