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I.緒言
1946年Doerflerは,心因性難聴の多数例について調べた所,その80%に第1図に示したような茶托(Saucer)様のオージオグラムが見られたと報告し,これは心因性難聴の一つの特長であると述べた。即ち所謂Saucer-audiogramである。この考えは,その正否は一応ともかくとして,所謂機能的難聴の,Audiologyの立場に於ける研究に新らしい足掛りを与えたものという点で甚だ重大な意義があつたというべきである。
抑々器質的病変の存在しない場合の聴力損失の最も大きい特長の一つは,その聴力損失の程度が日によつて大いに変化する所にあるという事で,この事実に基づいて所謂聴閾の反復検査が機能的聴力障害発見の最良の方法と考えられていた程であつた。即ち機能的難聴のオージオグラムはでたらめであり,従つてその再現性に乏しいと考える事である。所が最近DoerflerやGetz等は,所謂機能的難聴の中でも,かなり良くそのオージオグラムを再現し得る場合が決して少くない事を認めている。即ち,たとえ器質的病変が実在し無くともその聴力損失は決してでたらめではなく,何らかの必然性によるものだという事を認める事である。ここに新らしい機能的難聴研究のいとぐちがあつたのである。Getzが指摘しているように,小さな子供までがさも熟達した詐病者の如くそのオージオグラムを再現し得るという事実は,全く不可思議な事であると云わねばならない。
Taking up the view that a suacer-shaped audiogram would be produced in psychogenic deafness, following conclusions are reached: In author's cases all psychogenic deafness produced saucer-shaped-audiogram.
From the fact that similar audiogram would be produced with isoloudness contour the de-afness appear to be correlated to the loud-ness of the stimulation.
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