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I.緒言
鼓室形成術の目的は(1)慢性中耳炎の病巣を除去し,(2)鼓膜植皮によつて鼓室を形成すると共に,(3)聴覚理論に合致した伝音機構を再構成する事にある。この意味に於て本手術が諸家の報告に見る如く,中耳根治手術その他の手術によつて病巣を清掃し,その基盤の上に立つて爾後の聴力改善の操作が行われるべき事は云う迄もない。勿論,上鼓室や,乳様洞及び乳様蜂巣の病変が軽度で,之を広く開放処理する必要のない症例もあるが,本論文の目的はWullsteinのⅠ,Ⅱ又はⅢ型に相当する症例で,而も耳後部の病変が,従来の中耳根治手術,或は保存的根治手術の術式によつて処理せねばならない様な症例の取扱いに対する一つの試みを報告する事にある。
乳様蜂巣を広く開放し,外耳道後壁を低く落し,乳様洞,アヂッス更に上鼓室をも広く開放し,広汎な病変の清掃を行つて鼓室形成術を施行した症例で屡々問題になるのは,大きな耳後創腔の後療法中に起るトラブルと,更に創面の治癒後に於ても表皮化した大きな耳後腔が残ることは決して患者にとつても満足を与え得ないばかりでなく,長期にわたつて清掃監視を必要とするという点である1)。
In order to obviate the ghastly post auricular cavitation following a radical mastoidectomy reconstruction of the external meatus is attempted simultaneously with mastoid operation. This method is named, meatoplastic method. At the time of operation the wall towards the aditus is allowed to remain in rather a broad strip ; tympanoplasty is performed with this strip as its basis and the external meatus is reconstructed ; the post auricular wound is closed completely.
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