特集 喉頭腫瘍
声門下腫瘍の新しい手術法—輪状軟骨気管輪間切開術(intercricotracheal incision)
鈴木 安恒
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科
pp.442-444
発行日 1958年5月20日
Published Date 1958/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202017
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はしがき
わたくしたちは,この手術法を数年前から行っていた。これを始めた動機は,喉頭腫瘍の喉頭全摘出に際して,Réthi氏法などで,喉頭を輪状気管靱帯(Ligamentum cricotracheale)で切開し,これを上方に離断して行くとき,Lig. cricotrachealeの前方に切開を加え,気管輪のほとんど,軟骨部(Cartilago tracheale)を切り終えて,その切開創を輪状軟骨前縁に小さな鉤をかけて,上に引つ張り,下からのぞいてみると,声門の状態がよくみえるので,これにヒントを得たものである。
輪状気管靱帯の切開は,ほとんど出血することなく,その傷も一次の縫合によつて数日で治癒する。この点は,イワュールLaryngofissurの比ではない。Laryngofissurは甲状軟骨が化骨していないときは容易であるが,少し年令が進んで化骨が高度のばあいには,ふつうの鋏やメスを用いては,これが折れることがあるし,そのための特種の鋏を用いても,かなり硬く切りにくいことがあるし,ときには,軟骨にヒビが入ることがある。
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