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喉頭截開術とは一側の声脣に限局している初期喉頭癌に対し喉頭を截開し,喉頭内腫瘍を直視下に切除する方法で,此方法によると術後声音の保たれる点が喉頭全摘出術に比し優れている。此方法は喉頭癌の手術的療法として欧州に於て古くから応用されて来たものであるが,当時之が総ての症例に無差別に施行された為にその成績に見るべきもの無く,其後Billrothにより創意されGluck-Soerensenにより改良を加えられた喉頭全摘出術の登場を機として此截開術は全摘出術に圧迫され影をひそめた形に陥つていた。然るにSemonは自己の手術経験を基にして,此截開術も一定の適応症を選んで施行すれば効果の優れている事を注意し,その適応として,喉頭癌が一側の声脣に限局し,前方に於て前連合に達せず,後方は声突起に及ばず,然も尚声脣の運動のよく保存されているものを挙げた。彼によると1903年迄に上記適応の下に24例に截開術を施行し,内15例(60%)に持続的治癒を得さしめたと報じ,Thomsonは1930年迄に初期喉頭癌66例を截開術により治療し,其50例(76%)に持続的治癒を得て居り,然も彼の66例中29例は既に声脣の運動障碍を見たものに属し,前記Semonの唱える適応症に合致する37例中では31例(84%)に全治を見たと述べ,又Soerensenも1930年迄に125例の喉頭癌に対し截開術を行い,実に110例(88%)に治癒を来している。
翻つて我国に於ては截開術に関する報告は比較的遅く,1932年著者の一人田中文男の1例を以つて嚆矢とすると惟う。〔昭和7年5月,耳鼻咽喉科5巻6号〕。田中は,岡田某 49歳の男子,会社員
主訴 3ヶ月以来の声音嘶嗄
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