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喉頭癌に対する放射線療法は近年著しい進歩を遂げ,殊に米國に於てはその應用により既に我々には驚異と思われる如き優秀なる治療成績が挙げられている樣であつて,仮令えばLenzの如きはレ線照射を以つて喉頭截開術に勝るものであると迄に極言している程である事は一應注目すべき事実である.然し我國の現在の冶療状況を以つてしては,本症の治療法としての放射線療法に最初より全幅の信頼を寄せる処迄は行つていないと見るのが穏当ではなかろうかと思う.從つて喉頭癌殊に内癌に対する現在に於ける理想的療法は,依然として早期に之を診断し喉頭截開術を以て処理するにあると信ずるのであるが,実際問題としてSemonの提示する如き嚴格なる適應症,即,腫瘍が1側の声脣に限局し,夫が前方前連合に達せず後方声帶突起に及ばず.然も声脣の運動の正常に保たれている時期,に我々が患者を診る機会は残念乍ら極めて稀であると言わなければならない.
我々は,能うべくば此の適應症を少しでも拡げて,喉頭截開術を以つて治療し,声音を保存せしめて然も之を治癒せしめたいのであるが,さりとて一方再発の問題にも充分の顧慮が拂われなければならない.要は此の手術で腫瘍を完全に身体より除去し得るや否やの適切なる判断が極めて重要なのであり,之が仲々困難な事である.此の判定に対し我々が最も頼りとしているのは喉頭鏡所見であるが,之により後方披裂部に対する腫瘍の進展状況は可成り正確なる見当をつけ得るとしても,腫瘍が前連合又は声門下腔に迄侵襲し居るや否やに関しては視野が会厭又は声脣に蔽われて充分に究め得られない事が尠くないのを経驗している.実際喉頭全摘出を行つてみて屡々驚くのは,腫瘍が術前予想せる以上に大きく,殊に往々前連合,或は声門下腔に意外な蔓延をしている事が多い事である.
Takahara says, from his experience in two cases of intrinsic carcinoma of larynx with involvement of anterior commissure, the most appropriate method of approach in laryngofissure for removal of the growth is Jackson's anterior commissure technic. The author believes that in case the growth be found as short of invading the anterior commissure as in that of early carcinoma clipping techeic may be adequate enough to produce the desired effects, but otherwise, with involvement of the structure in question or with any doubt thereto, the anterior commissure technic is the method of choice because it would not only enable complete removal of the effected area, but also, to add a greater possibilities to permenent cures.
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