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病巣感染とは「一見それ程重要とも思われない限局した慢性の炎症病巣があつて,それ自身では殆んど無症状であるか,時に症状が見られる程度に過ぎないのに,これが原因で,病巣から遠く距つた諸臓器,組織に,原病巣とは殆んど無関係と思われる器質的乃至機能的障碍が現われ,而もこの障碍が原病巣の治癒により,軽快乃至消失するもの」であると考えられている(Billings1),真下2),稲田等3))。
病巣感染の原病巣としてはBillings1),堂野前4)等は扁桃,歯牙,副鼻腔,中耳,気管支,前立腺,卵管,胆嚢,虫垂等をあげているが,之迄病?感染研究の主力は扁桃,歯牙との関係の究明に置かれ,副鼻腔炎との関係については余り顧みられず,而も副鼻腔炎による病巣感染があり得るか否かに関しても未だ見解の一致を見て居ない現況である。特に,従来副鼻腔炎と病巣感染の関係については主として内,小児科領域の人々により検索されて来て居り,殊に本邦では,我科領域での本問題の研究,報告は極めて少く,従つて病巣感染の際の原病巣たる副鼻腔炎自体の病巣の如何に関しては,殆んど詳らかにされて居ないと云つても過言ではない。私共はこの点に着目して,過去数年来,副鼻腔炎による病巣感染に就いて,果して副鼻腔炎による病巣感染が存在するか否か,又若し存在する場合,原病巣たる副鼻腔自体の病変は如何なる状態にあるか,更に又,その際の局所並びに全身状態に如何なる異常所見が見られるか等について検討を行い,いささか興味ある知見を得て来た。茲にその概略をあげ,併せて今日迄,病巣感染の究明に力を盡された先人諸家の業蹟を紹介して,副鼻腔炎と病巣感染との関係を明らかにして見度いと考える。
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