Japanese
English
特集 診療ガイドライン・診療の手引き概要
3.副鼻腔炎
3.Handbook of sinusitis
黒野 祐一
1
Yuichi Kurono
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
pp.205-212
発行日 2010年3月20日
Published Date 2010/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101560
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
副鼻腔炎は耳鼻咽喉科領域で最も一般的な疾患の1つであり,その診断や治療に関してはすでに確立され,教科書的な著書も数多く出版されている。しかし,わが国ではガイドラインの作成にはいまだ至っておらず,その理由としてランダム化比較試験や二重盲検試験などの信憑性が高い方法によって評価された診断や治療法が少ないことが挙げられる。最近,欧州で,Evidence-based Medicine(EBM)に基づいた副鼻腔炎と鼻茸の診療に関するPosition Paperが作成されたが1),海外とわが国とでは医療環境がかなり異なるため,これをそのままわが国のガイドラインあるいは診療指針として使用することはできない。
こうした背景そして社会的要請を受けて,2007年9月に,日本鼻科学会の編集による『副鼻腔炎診療の手引き』が出版された2)。必ずしもすべての内容がEBMに基づいて記述されていないこと,一般的なガイドラインの形式に則っていないことなどの理由から,ガイドラインという表記は用いられていないが,副鼻腔炎に関して文献的な吟味と評価を経てわが国で初めて作成された『手引き』である。本書は全9章で構成され,第1章の定義に始まり第9章の解剖用語まで,急性および慢性副鼻腔炎の考え方および診療の指針がまとめられている。
そこで,この『副鼻腔炎診療の手引き』の作成委員の1人として,本書の概要とその用い方について,若干の私見を交えて述べてみたい。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.