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緒言
甲状腺組織が正常位置以外の他の体部に異所的に見出される場合は,此れを二つに大別する事が出来る。一つは転移性甲状腺腫瘍であり,臨床上並びに組織学的に腫瘍と断ぜられるものであつて,固有甲状腺の腫瘍性変化をしたものより転移したもので後天的なものである。他の一つは副甲状腺で,本来の甲状腺の所在より離れた位置に異所的に存在する甲状腺である。時に腫瘍状変化をなす場合もある。前者は悪性甲状腺腫の転移であり,後者は先天的なもので,固有甲状腺に対し副甲状腺と言い,此れが増大し腫瘍状を呈したものを副甲状腺腫と称して居る。後者の副甲状腺の最初の発表は,欧米にてはHickmanが1869年に,本邦にては若林氏が明治32年に報告して居る。そして副甲状腺腫瘍の内一番多く見られるのは舌根甲状腺腫で,鈴江氏の統計に依れば全副甲状腺腫の40%をしめると言う。当教室にて最近,発声障碍及び咽喉頭狭窄並びに異物感,軽度の呼吸困難を主訴とせる舌根甲状腺腫に遭遇し,手術療法に依り全治を見たので,此れに文献的考察を併せ此処に報告する次第である。
Hirano reports a case of accessory thyroid that was successfully removed by use of cautery knife. The patient, a woman aged 25, because of a mass located at the root of the tongue, complained of speech disturbances, choking se-nsation with presence of foreign body and some difficulty in breathing. The mass was removed with the patient under local anesthesis and in semirecumbent position.
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