Medical Topics
舌根甲状腺腫について,他
O
pp.82-83
発行日 1966年8月1日
Published Date 1966/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912845
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甲状腺は普通は前頸部で甲状軟首の下方に左右両葉に分かれて存在するが,まれに違所性(ectopic)甲状腺がみられる。すなわち,卵巣近辺,縦隔洞等に比較的多いが,極く珍しいものに舌根甲状腺腫がみられる。これは舌の背面盲管部に腫瘤として存在するものである。表面には,豊富な血管,主として静脈の蛇行しているのがみられ,可動性はほとんどみられず,弾力性硬で,大きさは種々である。患者はとくに症状を訴えないことが多いが,嚥下時に,異物感,閉塞感を訴えたり,構音障害を伴うこともあるが,大低は,偶然の機会に発見される。
この舌根甲状腺腫は,腫瘤であるが,腫瘍ではなく,正常の甲状腺組織よりできており,悪性化の傾向は正常に位置するものとほぼ同様であるとされている。舌根甲状腺腫は正常位置の甲状腺に伴うこともあるが,ほとんど全例が,舌根部のみに存在するものである。違所性である点,卵巣部,離隔洞部ももちろん検査されるが,現在までの所,他の違所性甲状腺組織を伴った例は報告されていない。
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