特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
全身麻酔によるアデノイド,扁桃摘出術
小川 常二
1
,
石塚 五男
1国立東京第一病院耳鼻科
pp.739-744
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201248
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まえがき
扁摘は吾々の領域の手術中比較的簡単な術式ではあるが,一方術中の急死,後出血等の事故があり,最も不快な手術でもある。特に小児に於て局所麻酔で扁摘を行うことは特別な場合を除き一般に困難である。一方病巣感染の立場から扁桃切除術は無益なるのみならず,却つて害ありと言う者もあり,欧米に於ては扁桃切除術と言う言葉は最近の文献には殆んど発見し得ない状態である。吾吾も3年来小児に於て扁桃の大小に拘らず扁摘を行わなければならない症例に遭遇し,全身麻酔による扁摘,アデノイド切除術を行って来たので,若干の経験を述べよう。先ず吾国及び欧米の傾向を文献によつて見ると次の如くである。
吾国に於ては扁摘に全麻を用いている者は少ない。吉田,畑,黒須,山川,小田,佐藤等が,エーテル吸入麻酔叉は静注麻酔を行つている。吉田は前処置として,バルビタール,アト・ピン,ナルスコ,モルフィンを用い,導入麻酔としてクロロフオルム,クロールエチル,エーテルを使用し持続麻酔としてエーテルと酸素を用いている。麻酔具としてはエーテルと酸素ガスをY字管に導き鼻腔よりネラトンカテーテルを用い,又口角に麻酔用フツクをかけて行う。患者は仰臥位,Davisの開口器を使用する時は麻酔用ゴム管を開口器の圧舌子に直結する。詳細は原著によつて見られることを切望する。
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