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Propylenglycol (以下P. G.と略称)が特殊なる溶媒として医療に応用せらるべきととをBa-chemが強調してからすでに久しいのであるが,この新しい溶剤が我国に於て注意されるに至るまでには余りに永い時間の経過されているのに驚く.この藥物が溶剤としての優秀さに就ては,藥理学的研究を基礎に本学中沢教授が1942年以来主唱している所であつて,著者等はその臨牀的応用を慫憑される儘に昨年来本剤の耳鼻疾患に対する応用に努めて来たのであるが,その結果,粘膜の疾患をその主要な対象とする我が領域に於ては,極めて広い応用範囲を持つた好適の溶剤であることを知つたので,之等の経験を報告して広く臨牀家の試用を望む次第である.
本剤は本邦に於ては,ビニール樹脂の添加剤として用いられるオクチールアルコールをヤシ油より製造する際に副産物として生ずるのであるが,第2次大戰中海外に於ては專らGlycerinの代用品として用いられて来た.その物理学的性状及び外見はGlycerinに醋似し,粘稠透明無色であるが前者に比して稍々苛烈な味を持つている.藥理学的には殆んど無毒に近く,静脈内皮下及び筋肉内にも注射出来る.皮下注射の場合は濃厚な儘では強い疼痛を訴えるのが欠点である.致死量は中沢の研究ではMausを対象として経口的Pro kg15瓦,皮下及び静脈内使用も之と大差ない結果を得て居るし,又文献の示す所も之に似た値を呈している.人に於ては相当の大量を用いても無害であつて,之による障碍を聞かない.最近本剤えの過敏症例を数例経験しているからこの点の考慮も必要であるが,その純度が重要な意味を有しているようで之に就ては他日教室からの報告が出る筈である.溶媒として注射の外経口的及び経肛門的にも使用されているが,我々に関係の深いのはその局所的な使用である.皮下注射では濃厚なものは疼痛を訴えるが中耳及び上気道粘膜では疼痛を訴えるものは稀である.中沢の研究ではその吸濕度を局方Glycerinに比較すると前者の25%に対してP. G.102%となつている.從つて濃厚液に於ては組織の障碍を来すのであつて,同氏の組織培養実験は原液で組織の生長を阻止することを認めている.然し50%以下になると障碍を来さない.この点は又利用すべきであつて,肉芽の萎縮を望む場合では濃厚液を用いればよい.毒性と見做さるべき症状は,致死量的大量を用いた場合に弱い麻醉作用を呈するのみであつて試験管内に於て溶血作用が認められている.P.G.がGlycolの誘導体のうちで医療に專ら用いられているに至つたのは其の毒性が最も少いことによる.
GOTO and associates emphasize the value of propylenglycol as a medium with which to facilitate absorption when drugs and antibiotics are used top-ically on the mucous membrane's. It has a special quality of absorbing moisture, disolving fats, penetra-bility through tissues and bacteriocydal actions yet almost non irritating. For these reasons it may be used as therapeutic agent to an advantage on the mucous membranes of the nose and throat, particu-larly, in chronic purulent otits media, chlesteatomatous otitis, sinusitis and post-mastoidectomy wounds.
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