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創傷に對する海水の應用に就て
伊藤 博
1
1名古屋大學附屬醫學専門部
pp.461-464
発行日 1948年12月20日
Published Date 1948/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200391
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緒言並に文獻的考察
創傷に對する各種療法は古來既に研究論議せられ,現今一般に藥物療法のみを主とせられつゝある現況なり。現今使用せられつゝある方法は各種藥物ガーゼを創面に貼用するものにして,所謂消毒劑による消毒作用に信をおきて使用せらるるものにして,理論上に於ては消毒效果として何ら疑を差挾むべき餘地なし。然れども消毒劑は消毒にのみ作用せず,創の肉芽面に障碍を與へ,組織の抵抗力を減するのは既に認められ居る所なり。然らば消毒ガーゼの消毒作用と,組織の抵抗力低下作用との綜合力は豫期せる如く偉大なるものには非ざるなり。
茲に於て第一次世界大戰前後に喧傳せられたる生理的療法を再檢討し,これに加ふるに現今に於ける各種化學療法を平行して使用する時は,その價値を上昇せしめ得るものなりと信ず。この意味に於て余は生理的療法に於ける5%〜10%高張食鹽水に代ふるに,海水(鹽分約1.8%〜2.5%)を用ひ創傷療法に應用して,見るべき效果を認めたり。依てこれを報告し大方諸賢の御批判御教示を仰がんとするものなり。
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