特集 皮膚泌尿器科領域の腫瘍
皮膚癌
川村 太郎
1
1金沢大学
pp.863-874
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201820
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I.緒論
皮膚癌は重要な皮膚疾患の1つである。また皮膚癌に関する知見は近時著しく進歩した。我国では皮膚癌は少いとされて居るが,近時平均寿命が延長したことにより,また臨床医学の進歩に因つて診断の正確になつたことに因つて,この数字が将来果してどうなるかは興味ある問題であろう。発癌の外因としては,従来重要視されて居た化学的物理的外傷の他に,近時紫外線即ち日光の発癌性が重要視せられるようになつて来た。その結果職業癌に新しい項日が加えられようとして居る。また有棘細胞癌と基底細胞癌とが臨床的にも甚だ性格を異にするということは広く知られて居るが,更に前者の悪性度をBrodersに従つて分類することも,米国では次第に一般化しつゝある。基底細胞癌或は基底細胞腫の組織像並に病理発生に関しては近時諸家に依つて論ぜちれる所であるが,之と関連して広く行われて居る所のDarierの皮膚癌を有棘細胞癌,基底細胞癌,異型癌とする分類に対して異論も唱えられて居る。米人の所謂黒色基底細胞癌,故太田先生の黒色上皮腫も,その漸く一般の注意を惹くようになつたのは,我国では近年に属する。皮膚癌の治療も亦最近に於て著しく進歩,就中近接照射をその標準的治療と看做す学者の多いことは注目に値する。
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