皮膚科懇話会
上皮性皮膚腫瘍
池田 重雄
,
上野 賢一
,
大森 清一
,
川田 陽弘
,
川村 太郎
,
北村 包彦
,
小嶋 理一
,
小堀 辰治
,
笹川 正二
,
鈴木 滋
,
高橋 吉定
,
野口 義圀
,
橋本 謙
,
原田 儀一郎
,
古谷 達孝
,
宮崎 寛明
,
水野 信行
,
森 俊二
,
山碕 順
pp.521-529
発行日 1960年6月1日
Published Date 1960/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202838
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.抄読
上皮性皮膚腫瘍
今日は御多用中のところ御出席いただきましてまことに有難うございました。癌腫は悪性腫瘍の代表的のものでありますから,そういう意味でも上皮性腫瘍は重要な病気であります。また皮膚の癌腫の発症機序,殊に基底細胞癌の病理発生に関しては,今後の研究に待つべき興味ある問題も残されて居ることも御承知の通りであります。教室でも上皮性皮膚腫瘍について仕事をして居る人が幾人かいますので今日はそれ等の諸君から話していただきたいと思つていますが,その前に私から前置き的なことを少し申上げたいと思います。また北村先生が兼ねてから注目していらつしゃつた陰嚢皮膚の2層性は皮膚腫瘍とくにPaget氏病などと何か関係がありはしないかとも考えられます。今日は先生にお願いして,後程,陰嚢皮膚の特殊の構造についてもお話していただくことになつて居ります。
ここにお目にかける標本は,Brodersで分類すれば4度位に相当する異型の強い有棘細胞癌でありまして,陰茎に原発,メラノブラストの増殖を伴う淋巴腺転移を生じた所の稀有な症例(寺田,中島:日皮会誌,66,573,1956)であります。このような組織ですと,有棘細胞癌か基底細胞癌かの判定に一寸まごつく場合があります。また皮膚癌の10%位は,所謂異型上皮腫,即ち混合型もしくは中間型であるといわれて居ります。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.