扉
口演における態度
久保田 紀彦
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1福井医科大学脳神経外科
pp.294-295
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901550
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最近は学会や講演会ブームで,頻繁に口演を見聞する.そのような機会に,口演の態度が大変気になる年になった.若い脳外科医を育てる立場と,人選の義務がある立場がそうさせるのかもしれない.また,年のせいで耳が遠くなったのと,眼が薄くなったことにも関係がある.特に,最近は教授選考の資料として口演を義務づける大学が増加していると聞いており,教授を目指す人は口演の内容ばかりでなく,しゃべる態度も評価される時代である.私共の大学でも,3年ほど前から教授選考の際,最終候補者3名が自分の研究概要,教育と診療に対する意見等を30分間口演し,15分間の質問を受ける講演会が行われている.そこで,自分への反省も兼ねて,思い当たるままに,口演時の『態度』に関係する事柄について綴ってみた.
まず身なりであるが,当然のことながら,華美な服装は御法度である.また,日本では髪の色や形,装飾品,髭などは,常識の範囲に留めておくべきであろう.最も大切なことは,『しゃべり方』である.時と場合にもよるが,自信に満ちた態度よりも,控えめに淡々としゃべった方がよい.たいていの場合マイクを使うので,声量はあまり大きくなく,ゆっくりと話す方がよい.意味明瞭な言葉を選んでしゃべる方が,すっきりと聞ける.冗長に言葉をならべる癖はつけない方がよい.大変難しいことであるが,顔つきや目つきは淡々として,できれば少し楽しそうにしゃべると,聞いている方は気分が良い.いつもにこにこと笑顔を絶やすことなく喋れる人は幸せである.私自身,見ていて気分が悪いと指摘されたことがあるが,話を強調するときに,前額部に縦皺をつくる癖が未だに抜けずに困っている.
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