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はじめに
心理学領域では,「様々な対象(他者,自分,事物,集団等)に対して一定の仕方で反応させる個人内部の傾向性」を態度と呼び,態度は「人間の行動を説明するための仮説的な構成概念」として取り扱われている1).態度はまた,環境への適合・自己防御・価値感の表出・事象の解釈の強化因子とされ,特定の方向に反応するように影響を与える個人内部の傾向と言われている2).
つまり態度は,人々が事象・事物に直面して,感じ・考え・行動する方向を決定する心理的要素を意味している.
障害者リハビリテーションは現在では,「障害者の最適生活を獲得するためのもの」と理解され,そのためには障害者自身の機能改善と環境への適応のみならず,障害者のための環境整備が必要で,その達成には社会全体の参加が必要であるとされている3,4).WHO専門委員会はまた,障害者の生活環境改善の方法として,周辺環境の整備と社会の改善とを挙げている4).このうちの社会の改善とは,建築物などのハード面と共に社会の障害者に対する態度の改善を意味している.このことは,障害者リハビリテーションにおいて,障害者に対する人々の態度がその基盤になっていることを意味している.
障害者に対する態度の実態については,欧米では多くの研究がみられるものの,わが国ではまだほとんど明らかにされていない5-13).よりよいリハビリテーション社会のためにはどのような態度が好ましいのか,教育・啓発運動は態度にどう影響し得るのか,といった議論は少なく,好ましい態度を醸成するための研修方法の開発もほとんど行われていない.
このような視点から筆者は,障害者に対する態度についての理解を深める目的で,社会的属性の異なる集団の人々における「障害者に対する態度」(以下,「態度」と略)を調査し,属性や障害者との交流経験と「態度」との関係について検討した.
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