Japanese
English
連載 脳神経外科と分子生物学
グリアを中心とした脳の分子生物学
Neurosurgery and Molecular Biology : (series 2) Molecular Biology of Glial Cells
池中 一裕
1
,
熊田 竜郎
1
,
南木 浩二
1
Kazuhiro IKENAKA
1
,
Tatsuro KUMATA
1
,
Koji NANMOKU
1
1岡崎国立共同研究機構,生理学研究所生体情報研究系神経情報部門
1Laboratory of Neural Information, Department of Information Physiology, National Institute of Physiological Sciences, Okazaki National Research Institutes
キーワード:
astrocyte
,
oligodendrocyte
,
cell lineage
,
gene therapy
Keyword:
astrocyte
,
oligodendrocyte
,
cell lineage
,
gene therapy
pp.297-301
発行日 1998年4月10日
Published Date 1998/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436901551
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I.はじめに
哺乳類中枢神経系にはアストロサイト,オリゴデンドロサイトおよびミクログリアの3種類のグリア細胞が存在する,アストロサイトは脳血液関門を形成し,神経細胞へのエネルギー供給を行う他,脳損傷時には修復にも関与する.近年,神経伝達の調節にも重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた.オリゴデンドロサイトはミエリン(髄鞘)を形成して跳躍伝導の誘導に寄与している.ミクログリアは死細胞の除去の他,各種液性因子を放出して脳のホメオスタシスの維持にも関与している.
グリア細胞は上述の機能の他に,難治性の遺伝性神経疾患の治療に際しても着目されている.既に米国を中心にパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS),またはゴーシェ(Gauche)病やクラッベ(Krabbe)病などのリソゾーム病において遺伝子治療の申請がなされているが,ほとんどが,グリア細胞へのex vivoにおける遺伝子導入を基本としている.これは,グリア細胞の前駆体が成人脳にも存在し,in vitroで細胞増殖をさせ遺伝子導入をした後,脳内に戻すことができるからである.
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