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連載 脳腫瘍の遺伝子療法:基礎研究の現状と展望・1【新連載】
脳腫瘍の遺伝子治療:現況と展望
Gene Therapy for Brain Tumors:its present state of the art and future prospects
田渕 和雄
1
Kazuo TABUCHI
1
1佐賀医科大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Saga Medical School
キーワード:
Brain tumor
,
Gene therapy
Keyword:
Brain tumor
,
Gene therapy
pp.803-809
発行日 1994年9月10日
Published Date 1994/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900897
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I.はじめに
近年,遺伝子治療(gene therapy)が多くの関心を集めるようになった背景には,分子生物学の進歩により,遺伝子の異常が根本的な原因となって発症する疾患が数多く明らかにされるようになってきたことがある.両親から受け継いだ単一あるいは複数の遺伝子異常を基盤として発症する遺伝病は言うまでもなく,後天的に生じた複数の遺伝子の機能異常によってもたらされる癌も,広く遺伝子治療の対象と考えられるようになっている.
遺伝病に対する遺伝子治療は,ある細胞に特定の外来遺伝子を導入し,疾患の原因となっている遺伝子を置き換える(replacement therapy)か,あるいは不足している遺伝子の機能を補充(supplement therapy)する,病気の原因療法のひとつである1,8,11,13).ところが,癌の遺伝子治療では,癌細胞を殺傷する働きのある遺伝子(例えば自殺遺伝子)を直接導入するとか(suicide gene the—rapy),癌に対する免疫能を高めるような遺伝子を癌細胞あるいはリンパ球に導入する方法(immune enhance—ment therapy)などが主に試みられている2,15,18).
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