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昨平成5年の秋,脳神経外科の民間大使としてロシヤなど東欧3カ国を訪れた.Citizen Ambassador計画はアイゼンハワー大統領の提唱で始まり,近年事務局が独立し大使も米国人に限らなくなりました.今回のリーダーはカナダMacMaster大のHausenbout教授,英国よりLondon大,米国はMinnesota大とHarvard大の教授が来るので日本から是非にと指名勧誘です.私も未知の脳外の教授連と旅を共にし語るのも意義ありと考え,又同時期メキシコ市でのWFNS総会から未来に通ずるholography技術の講演の依頼もあり,帰途に寄れると承諾しました.さて,昨年10月のロシヤはソビエト体制から脱皮して間がなく,更に偶々モスコウでは砲撃戦のCoup事件があり戒厳令下の旅となりました.唯,天候に恵まれ最初の訪問地サンクトペテルブルグは空があく迄も青く,Hermitage美術館への招待の豪華な文化交流で始まりました.翌日はPolenov脳外研究所,Verden外傷研究病院で私の研究,脳圧のmonitorとその自動制御法や外傷急性期のMRIを講演,病棟の回診もしました.若手第一線の脳外科医や神経学者の真摯な姿勢,鋭い眼光,本音本質的な討論の連続に襟を正しました.晩餐会で当市は歴史的に日本と深い交流が長いとてスピーチや乾杯の中心にさせられ彼らのエネルギーに感心しました.唯,政治局員らしい脳外のスタッフがモスコウより突然呼び出され,政変の急を感じました.
Belarus(白ロシヤ国)のMinskは閑静で美しくロシヤ寓話を髣髴とさせる首都です.独乙軍などに徹底的に荒らされ施設や図書も焼失し現在は国力をあげてトラクター製造産業に賄け努力しています.日本からの医薬品を大切にし超音波診断器に頼っているとのこと,回診時偶然神経内科医が私のかつて知遇を得たKlever教授の弟子で懐しい古典的神経学の話に花が咲きました.元来,学問好きで人が良く,聡明な資質の民族であり外国諸文献を読む機会が必要とのみ思いました.
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