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脇目も振らず一心不乱に前進している時期には思いも寄らないこと,あるいはその時期には意に介していないことが,むしろリラックスしているときに突然閃くことがある.その契機は,ちょうど節目時に,一瞬立ち止まって,大きく深呼吸したときなどに起こる.「扉」の武笠晃丈先生は,新元号に変わる時期に,ふとご自身の「平成」時代を走馬灯のように振り返られた.小生よりも1世代も2世代も若く,現在,すでに世界の脳腫瘍研究の権威となられている方でも,このような時代の中で過ごされてきたのだと思うと感慨深い.その行間からは,ここで再び次世代を見据え,これから10年後,国際的な脳腫瘍研究でさらに大きな飛躍をされる新たなる第一歩を踏み出されたのだと感じた.
まず1本目の総説,西岡宏先生による「下垂体腫瘍の2017年WHO組織分類」は圧巻である.今回の改訂の内容を簡潔に,しかも系統立てて概説してくれている.「内分泌腫瘍WHO 2017第4版」を前にして,内容が十分に理解できずに途方に暮れていたが,この論文のおかげでそのポイントが極めて明快に理解できた.下垂体腺腫もその分泌系で分類されていた時代が終焉を迎え,これからは分子生物学的基盤に基づいた新たな体系が構築され,臨床像ともよく相関するようになったのである.ただし,下垂体後葉系腫瘍や頭蓋咽頭腫などは,まだその端緒に就いたばかりであり,今後の研究が俟たれる.2本目の早川幹人先生による総説「超急性期脳梗塞に対する再開通療法の現在」では,現時点での静脈血栓溶解療法と血栓回収デバイスの最新のエビデンスと今後の課題が端的にまとめられており,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(平成30年12月14日,法律第105号)に則り,PSCおよびCSC施設の横断的連携整備の課題がわかりやすく解説されている.
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