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今号は,2009年度の初頭を飾るに相応しい,大変すばらしい内容の論文が満載されている.まずは,『扉』の井上 亨教授の「Mickeyのつぶやき」は,われわれのような医学教育職に就いている者にとっては考えさせられる内容であった.毎年,4月には,生命の本質を探究し,生命を救う手段を学ぶという崇高な気概を持って多くの医学部1年生が大学の門をくぐる.その医学教育の現場は,はたして彼らの理想に十分応えているであろうか.現行の研修医制度の中で,かなりの研修医が自分の進路にさまざまな不安を抱いていると聞く.理想とする指導医と巡り会えたり,自分の抱いた夢や希望を叶える方策を見出せる者は少数であり,むしろ研修医の多くは,日常の医療業務に忙殺され,考える暇もないと聞いている.さらには医療訴訟等の医療現場に吹き荒れる嵐の中で,医学生の時に抱いていた高い理想はいつしか現実のなかに埋もれ,目先のことにばかり捕われて研修生活を過ごしていないだろうか.医学生の講義や実習を受けるときのあの純粋で美しい眼差しを前に,教育者はいつしか熱くなる.その純粋さを失わせずに,気概に燃える若き医師を養成するために,今なすべきことは何か.さまざまな思いが脳裏を過った.
『総説』の下田雅美先生の「MRI firstによる頭痛診断」は,日常診療で頻繁に遭遇する「頭痛」を主訴とする症例に対して,MRIを画像診断として第一選択とする施設が増えている現状を鑑みて企画された.すなわち,MRI firstで検査したがゆえに異常所見と混同しやすい正常変異や,頭痛の誘因として決して見落としてはならないSAHとMRI上鑑別すべき疾患等を,自らが経験したMRI所見を中心に解説している.内容は,単に鑑別のポイントを示すばかりではなく,各疾患ごとに病態や治療法にまで言及しており,日常の診療にすぐにでも役立つような配慮がされている.
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