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今年も新年度が始まった.その冒頭の「扉」に上羽哲也先生の「意識改革」が掲載されている.普段はにこやかでとても明るい先生からは想像もできないほどの苦悩に満ちた青春時代と,そこで見つめ直したパラダイムシフトが赤裸々に描かれており,その結果,「変わることを恐れない」強靱な精神を培われ,「足踏みは後退と同じ」の信念のもとで,「向上心をもち,今の意識をポジティブにシフトして,自由と寛容を目指す」決意が述べられている.新たな年度の始まりにふさわしい「巻頭言」である.高知の海がカリフォルニアの抜けるような青い空と紺碧の海に似ているという.まさに住めば都である.さて,「総説」では,前原健寿先生の「てんかんと高周波律動」が取り上げられている.新たなてんかんバイオマーカーとして最近注目を集めている病的高周波律動の原理と将来の有用性について多くの図表や実例を掲げながら,わかりやすく丁寧に概説されている.今までのてんかん焦点診断に用いられて来たスパイクよりもはるかにてんかん原性領域の同定に有用であり,今後のてんかん治療に大きな福音をもたらすのではないかと期待に胸が膨らむ.「脳神経手術手技」では中尾直之先生の「傍鞍部腫瘍に対する内視鏡下拡大蝶形骨洞手術」が掲載されている.近年の神経内視鏡手術手技は新たな器具の開発と相まって,適応拡大が急速に進んできている.今回は,そのなかでも鞍結節経由の傍鞍部腫瘍の手術手技に焦点を絞り,その局所解剖所見からの手術戦略を豊富なオリジナルの図入りで解説されており,今までにない極めて教育的な内容で大変理解しやすい.また,「連載:脳卒中専門医に必要な基本的知識」では,新妻邦泰先生の「無症候性脳血管障害」として,既存のガイドラインよりも後に報告された無症候性脳梗塞,大脳白質病変,脳出血,主幹動脈狭窄/閉塞,AVM,脳動脈瘤について,総数128編にも及ぶ文献から新しいエビデンスを抽出して概説し,現時点での対処方法が検討されており,極めて重要な情報提供がなされている.また,末梢神経の症例蓄積からの研究報告や,極めて有用な情報を含んだ症例検討,さらには,シャントパッサーの新たな器具試作報告のテクニカルノートなど,今回は新年度を飾るにふさわしい極めて情報量の豊富な論文が満載である.読者の明日からの診療や研究の一助となることを期待している.
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