- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
ソチ冬季オリンピックでのいくつかの日本人の活躍の中で,特に葛西紀明選手のラージヒル銀メダル受賞決定の際,他の若手日本人選手3名が声を揃えて,「素晴らしい先輩と一緒にいられて幸せ.この先輩を目標に自分も頑張りたい」とのコメントを述べていたのが印象的であった.脳神経外科の世界でも,将来,世界をリードする若手育成のために,ベテランの素晴らしい経験や技術が本誌に掲載され,指南役として若手への技と知恵の伝承に貢献することを切に願っている.
さて,今月号の内容も,われわれが日常診療で配慮しなくてはならない重要な情報が満載である.まず,「扉」にはシカゴのNorthwestern University小児脳神経外科部長の富田忠則先生から「米国における小児脳神経外科の現状」についてご寄稿いただいた.「総説」では,ここ数十年間新たな治療の進展がみられていない頭部外傷救急患者のブレイクスルーを目指して頭蓋内圧モニターの再考が,山口大学の末廣栄一先生により検討されている.特に,各種脳圧変化をいかに予見し,予防処置を迅速に行うべきかが,わかりやすく解説されている.また,「研究」では,最近その手術手技の進歩や技術革新により適応疾患が拡大されつつある神経内視鏡を使用した脳室内およびその近傍の腫瘍に対するアプローチの注意点やその後の管理についての知見を,富山大学の黒崎邦和先生が要領よくまとめている.12回目となる,連載「合併症のシステマティック・レビュー」では,腰椎の除圧固定術について,高橋敏行先生におまとめいただいた.膨大な数の文献レビューに基づく非常に貴重な報告である.また,脊椎脊髄外科のなかでも,難度の高い脊椎腫瘍および脊髄髄外腫瘍手術について,より手術を安全に行うための基本的知識と手法が髙見俊宏先生から報告されている.さらに,愛知医科大学の高安正和先生の発案で始まった「教訓的症例に学ぶシリーズ」では,スポーツ現場で現実に起こったトラブルの実例が報告されている.これこそ,現場の医師がどのように対応するかによって,その後の機能予後に大きく関与する疾患の代表例であろう.西廣真吾先生が書かれているこのような症例に遭遇したときに,どのように対応すべきなのか.若手脳神経外科医が学ばなくてはならない技と知恵の伝承が今回も満載である.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.