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今年も新年度が始まった.その冒頭の「扉」には,山田和雄先生の「脳神経外科医としての人生設計」が掲載されている.普段はにこやかで温厚と評判の先生からは想像もできないほどの苦悩に満ちた内容である.ご自身の半生を振り返り,脳神経外科医としての神髄を究める一方で,年代とともに求められる役割,表現形は時々刻々と変わっていったこと,そして「脳神経外科医を極めようと努力したが,未だ道半ばの脳神経外科医の言葉」として,今後の人生設計への決意が述べられている.新たな年度の始まりに相応しい「巻頭言」である.若い頃の留学中の上司の言葉が,40年を経た今になって理解できるという.まさに「学習の鬼」である.
「総説」では,辻篤司先生の「ARUBA study後の脳動静脈奇形の治療」が掲載され,未破裂脳動静脈奇形に対する外科的介入の意義を検証するために実施された本臨床研究の中間報告に基づいて,わかりやすく丁寧に概説されている.適切な適応,計画された治療戦略,優れた治療技術を備えた治療チームであれば,積極的な治療介入も良しとする筆者の意気込みを強く感じる.「研究」は2篇掲載され,石﨑友崇先生の「未破裂脳動脈瘤手術における運動誘発電位モニタリングの有用性と問題点」では,運動誘発電位モニタリングを用いた機能予後に配慮した手術戦略について,豊富な画像や術中写真とともに報告されている.金景成先生の「糖尿病患者にみられたしびれの原因に関する前向き検討」では,日常よく対応する糖尿病症例において絞扼性神経障害を合併しやすいなどの指摘は今後の日常診療に大変役立つ.連載の「脳腫瘍Update」では,シリーズ6回目を迎え,岡秀宏先生の「胎児性腫瘍」が掲載されており,日常診療で鑑別すべき検討項目が画像診断・病理診断も含めてわかりやすく記載されており,極めて重要な情報提供がなされている.また,「症例報告」でも,腰椎腹腔シャント術後の合併症,破裂末梢性脳動脈瘤,頚髄硬膜外血腫,仮性動脈瘤へのIVRなど,新年度を飾るに相応しい極めて情報量の豊富な論文が満載である.また,「臨床留学のすすめ」には,小生も留学経験のあるトロントへの留学内容が掲載されており,20年以上も前になる当時の想い出に浸った.本号も読者の明日からの診療や研究の一助となる力作が満載である.
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