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新しい年を迎えた.伊藤昌徳先生の「扉」は,新春を飾るに相応しい巻頭言である.脳神経外科医の生涯教育に言及し,「脳神経外科における生涯教育は,一生勉強,一生青春」であることを述べられている.また,引用されているミケランジェロの名言「私は今でも勉強している(Ancora Imparo)」は,日本脳神経外科コングレスのモットーとして,その紋章に今も刻まれている.現役の脳神経外科医として生き続けるためには,日々弛まぬ努力と実践が必要であり,学び取る姿勢に終わりはない.その覚悟で,本誌を読み進めると,まずは神一敬先生のてんかん診療の新時代の幕開けの総説である.新規抗てんかん薬の相次ぐ市場への参入,診断の解析にビデオ脳波モニタリング検査が保険適応となり,さらには迷走神経刺激術の保険適応なども相俟って,近年,脳神経外科医のてんかん医療に対する興味が急速に高まっている.しかし,未だてんかん専門医が絶対的に不足している現状においては,脳神経外科を含む関連各科で的確に診断・治療をする体制を整えることが急務であり,その啓発の意味でもタイムリーな内容となっている.さらにページを捲ると,動脈瘤と下垂体腫瘍が合併した症例や,未破裂動脈瘤に対するコイル塞栓術中に母血管にコイルの一部が突出した症例の検討など,さまざまな難題に立ち向かう果敢な脳神経外科医の勇姿が映し出されてくる.今回の症例報告も,一筋縄では解決できなかった困難な例を,いかにして救ったかの,武勇伝に等しい強者ばかりの報告であり,感服させられる.さらに,米川泰弘先生の脳神経外科手術手技に関する連載が,今回はもやもや病である.脳神経外科疾患の中でも本疾患は,本邦で発見され,邦人がその発見者であり,その後の調査研究でも世界をリードしている疾患として,極めて価値の高い病態である.その詳細を纏め,一気に報告した内容は,只々読む者を圧倒する.引用されているヒポクラテスの言葉,「物事に熟練するには長くかかる,人生は短い,好機は早く逃げてゆく,物事を試すことは危険である,正しい判断は難しい」とは,まさにこの病態の解明に携わった面々の歴史を見れば一目瞭然である.脳神経外科を究める道に王道はない.あるのは前人未到のイバラの道のみなのであろうか.日々の研鑽が続くこの道は,今年も変わることはない.
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