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今年もまた,ノーベル生理学・医学賞を日本人が受賞しました.北里大学の大村智特別栄誉教授は,土壌から新種の放線菌を発見し,これが抗菌薬や抗寄生虫薬の開発につながったというものです.WHOのworld health reportによると,世界規模でみた死因の第1位はいまだに感染症で,マラリアなどに代表される寄生虫感染症に多くの方が苦しんでおり,大村先生の受賞は,病気から救われた人の多さが1つの尺度になっているように思われます.報道による情報では,たくさんの土壌を採取して解析するという力仕事で,しかもそれが人類に大きく貢献したという点で,われわれ脳神経外科医も共感を覚えるところがあるように思います.また,先進国においては感染症のかわりに脳卒中が同じくらい大きな課題であり,画期的な治療法の開発などが求められているわれわれの領域にもよい刺激になったように思われます.
さて,本号の「扉」では,昭和大学の水谷徹教授が「脳動脈瘤の手術教育とIT」と題した寄稿をされています.脳動脈瘤手術教育をライフワークの1つとされる水谷先生が,無編集のハイビジョン動画ファイルで学ぶことの重要性と方法について紹介されています.総説では,自治医科大学の渡辺英寿教授が「脳神経外科における3Dプリンターのインパクト」と題して解説されています.3Dプリンターの活用方法を網羅的にご紹介いただき,また,開発中の内容にも触れられています.また,新連載として「脳腫瘍Update」が始まりました.その第1回は,帝京大学溝口病院の渋井壮一郎先生による「脳腫瘍疫学の変遷」です.脳腫瘍全国集計のご経験などをもとに,各国の状況などもご紹介いただいています.今後のこのシリーズの展開にもご注目ください.その他にも,今回は研究論文を2編,「血管内手術における頭蓋内動脈穿孔時の対処」と,「乳幼児軽症頭部外傷のCT撮影基準—当院の459例のCTから—」を掲載しています.また,症例報告が5編で今回はいずれも血管障害系の論文となりました.報告記では東京女子医科大学の林基弘先生が主催された国際学会が紹介されています.充実した内容が満載の本号が読者諸氏に刺激を与えることを期待しています.
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