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医学の進歩は,偉大な先人たちのさまざまな創意工夫と試行錯誤の上に成り立っています.特に抗生物質の発見をはじめとして,現代に入ってからの医学の進歩はめざましいものがあり,脳神経外科学もその最先端の一角に位置していると言ってよいのだと思われます.その脳神経外科学の進歩に関しても,CTやMRI,手術顕微鏡などブレイクスルーとなる医療機器の開発の他にも,多くの先人たちの個別的な創意工夫の集大成として,ここまでの進歩を遂げています.ところが近年,その創意工夫に対してもさまざまな規制を受けるようになってきました.厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」が,平成20(2008)年に改訂され,その前文には,「被験者の人間の尊厳及び人権を守るとともに,研究者等がより円滑に臨床研究を行うことができるよう,ここに倫理指針を定める」とあり,臨床研究における倫理的な対応が強く求められるようになっています.一方で,平成22(2010)年6月に閣議決定された「新成長戦略~元気な日本復活のシナリオ~」においては,新たな医療技術の研究開発・実用化促進が重要項目として計画立てられています.臨床試験やトランスレーショナルリサーチを活性化して,日本発の薬や医療機器の開発を推進し,国力を上げようとする動きです.
さて,本号の扉では東京女子医科大学の伊関 洋先生が,「医療機器開発とレギュラトリーサイエンス」について述べられています.臨床試験の方法やその考え方,新規医療機器開発を行う上での心構えや押さえておくべき基本的知識を簡潔にまとめられています.また,「新規医療技術には未知の危険が存在する」ために,その対策としてレギュラトリーサイエンスがあり,それはリスクとベネフィットのバランスを評価する科学であると定義づけています.「有効性と安全性の評価科学」であるレギュラトリーサイエンスの,今後の成熟が期待されます.総説では,岩手医科大学の佐々木真理先生が,「頚動脈プラークイメージング」について詳しく解説されています.T1強調MRI画像と言っても,さまざまな撮像法があることがわかりやすくまとめられており,頚動脈狭窄性病変の理解と治療の進歩に貢献するタイムリーな総説と言えます.その他にも研究論文が4編,症例報告が5編,連載の「教訓的症例に学ぶシリーズ」が収載されており,本号も大変内容が濃いものとなっています.
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