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いま,世間ではアベノミクスと称される景気刺激策が関心の的となっています.大胆な金融政策,機動的な財政政策,新たな成長戦略を3本の矢としてGDP成長率の上昇や国民総所得の拡大を目指しています.この3本目の矢の成長戦略においては,戦略市場創造プランとして国民の「健康寿命」の延伸がクローズアップされており,われわれ医療業界も深く関わることになります.具体的には,現在でも医薬品や医療機器開発の体制整備や,そのための拠点の整備が着々と進められていますが,さらにPMDAの強化や医薬品や医療機器開発に関わる規制の緩和なども行われ,国際競争力を持てるように審査のスピードアップが図られます.大学などにおいても新たな医薬品や医療機器の種(シーズ)を掘り起こし,知的財産権を確保し,企業などと連携を取りながらこれを実用化し,さらに国際展開を図ることが求められています.また,大型研究費の投資先に関連して,日本版NIHの設置に関する議論と,その行く先が注目の的となっています.高齢化社会における医療・介護サービスの充実も現状の課題であり,医療関連産業の活性化なくして,明るい未来は見えてきません.
さて,本号の「扉」では埼玉医科大学総合医療センターの松居 徹先生が「一脳外科医として抱く無常という事」と題した寄稿をされています.無常とは仏教用語ですが,松居先生は脳神経外科の無常にも着目され,そこにある無常の美やそこにみつける喜びについて言及されています.先達の力により,脳神経外科学も常に進歩を続けており,10年前の考え方は既に古くなっているのかもしれません.無常の脳神経外科学に対応するために,われわれは常に学び続ける必要があるのでしょうし,本誌で紹介されているような数々の研究開発が将来を担うのだと思われます.本号におきましても,研究論文やテクニカルノートにおいて,新しい工夫などが紹介されています.総説では,慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の藤原俊之先生に「ニューロリハビリテーションの最近のトピックス」をまとめてご紹介いただいています.また,症例報告も最近のトピックスに相応しい症例が掲載されています.合併症のシステマティックレビューや脳血管内治療医に必要な知識など,連載項目も引き続き充実しています.
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