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最近,日本の臨床研究や医学研究の不正問題が世間を騒がせています.データの捏造や改竄はもっての外ですが,そのような悪意がなくとも利益相反の点で問題となることがあります.要点は,薬や医療機器を製造販売する業者から資金提供や役務提供を受けることで,医師主導の臨床研究が歪められることがないよう,関係を開示して透明性を高め,不適切な関係は排除する必要があるということです.この場合の利益相反は,国民の利益と企業の利益が相反していて,われわれ医療者は国民の利益を代弁する必要があるのです.最近,全国医学部長病院長会議から「医系大学・研究機関・病院のCOI(利益相反)マネージメントガイドライン」が,また日本医学会から「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」が発表されました.さらに厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」も改定作業が進んでいます.利益相反に関する方針が大きく転換しつつある現在,雑誌の査読においてもその変化に適切に追随する配慮が必要です.
さて本号の扉では,旭川医科大学の鎌田恭輔教授がコミュニケーション能力の重要性を説いています.特に海外留学経験や工学部という異種分野への国内留学経験をもとに,コミュニケーションによって得るものの大きさを強調されています.総説では,NTT東日本関東病院の川合謙介先生が,てんかんの緩和的治療という新しい視点を,迷走神経刺激療法を代表として解説されています.緩和的治療としての効果を判定するために,適切な評価軸が必要となることを指摘されています.解剖を中心とした脳神経手術手技では,新古賀病院の一ツ松勤先生が頚動脈内膜剝離術の外科解剖を,大変わかりやすい解剖画像や手術所見を多数使用して解説されています.若手の解剖の勉強のために有力な参考文献となるのではないでしょうか.連載の脳卒中専門医に必要な基本的知識では,血小板の活性化とその制御を概説されています.その他にも,研究論文2編,テクニカルノート1編,症例報告4編などが掲載されています.特に,最近世間を騒がせている脱法ハーブ使用による合併症として横紋筋融解症が紹介されていることが注目されます.本号も引き続き充実した内容が満載です.
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