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世間ではバンクーバーオリンピックに盛り上がっている最中,脳神経外科学会では新専門医研修制度を動かすための実務的な作業が続いている.新たな基幹施設や研修施設などの研修プログラムの枠組みの中で,研修プログラムの募集が始まったところである.大きな混乱なくスムーズにスタートしてほしいと願う.また,医療界では中医協が平成22年度の診療報酬改定を厚生労働大臣に答申したところである.中医協とは中央社会保険医療協議会の略称で,診療報酬を決める厚生労働大臣の諮問機関である.最近では,我らが日本脳神経外科学会の一員である嘉山孝正先生が委員に入ったことが話題を呼んだ.今回の改定では診療報酬総額が0.19%引き上げられる.勤務医の疲弊や診療科間の格差はだいぶ世間に認知されたようで,医師の技術料などが大幅増となる.「救急,産科,小児,外科などの医療の再建」と「病院勤務医の負担軽減」を重点課題と位置付け,優先的に配分するようになっている.われわれ脳神経外科医の環境も改善されるように願うものである.一方で,勤務医の待遇改善という趣旨から外れて,病院の赤字解消のみに費やされないように,見守っていかなければならない.われわれ脳神経外科医も意見を発信していく必要があるが,そのためには基本情報を収集して勉強しておく必要がある.学会場やさまざまな雑誌上で,社会面での情報も交換することが重要と思われる.
さて,本号の扉では大阪医科大学の黒岩敏彦先生が「バランス感覚」についてエッセイを書かれている.個人情報保護法に対する過剰反応や,手術中の綿花のカウントなどを例に挙げられ,木を見て森を見ないような事態にならないように注意喚起されている.先生のお人柄がにじみ出ている名作である.
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