コラム:医事法の扉
第42回 「褥瘡裁判」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.1038
発行日 2009年10月10日
Published Date 2009/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101042
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医療過誤訴訟には,「褥瘡裁判」と呼ばれる有名な紛争があります.争点として,①褥瘡の予防・治療・監視を怠った注意義務違反,②褥瘡と感染症による死亡との因果関係,などが問題となります.今回は,2つの「褥瘡裁判」をご紹介し,われわれ脳神経外科医が紛争を回避するためにどうすればよいのかについて検討します.
1つは,61歳女性の脳出血患者で左片麻痺があり寝たきりであったため,発症後約2週間で仙骨部の表皮が剝離し,その後,褥瘡が拡大していったケースです.患者は5年後に死亡し,患者の夫らが病院を設置・管理する市に対し,褥瘡予防を怠ったとして慰謝料600万円を求める損害賠償請求をしました.裁判所は,当該病院の看護業務の多忙さ,患者の年齢・栄養状態なども考慮した上で,褥瘡予防措置がとられていたことを推認し,請求を棄却しました(名古屋地裁昭和59年2月23日判決).もっとも控訴審で,100万円で和解が成立したようです1).
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