「精神医学」への手紙
少年の裁判員裁判と精神医学の役割―模擬裁判の経験から
高岡 健
1
,
川村 百合
2
1岐阜大学医学部精神病理学分野
2日弁連子どもの権利委員会
pp.814-815
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101477
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少年事件であっても一定の重大事件は,家庭裁判所から検察官送致がなされ起訴されれば,裁判員制度の対象となる。裁判員制度の開始を目前に控えて,少年刑事裁判の模擬裁判が,東京地方裁判所で行われた。この模擬裁判に,第2筆者(Y.K.)は,弁護人役として関与し,第1筆者(K.T.)は,弁護人からの依頼で私的鑑定を行った精神科医役として関与した。
事例は,広汎性発達障害を有する犯行時18歳の少年が,タクシー運転手を刺して死亡させ,現金を奪った強盗致死事件である。検察官は無期懲役を求刑し,弁護人は保護処分相当として,家庭裁判所への移送(いわゆる55条移送)を求めた。評議における裁判員と裁判官の判断は,当初9名中1名のみが保護処分相当であり,残りが刑事処分相当であった。続く刑事処分のうち何を選択すべきかについての評議では,無期懲役刑を選択すべきとしたものが1人,有期とすべきとしたものが8人であった。最終的には,9名中5名が5年以上10年以下,4名が5年以上7年以下の不定期刑と判断し,わずか1名の差で前者の判決が少年に下された。
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