神経性筋萎縮症モデル（イヌ）

Neurogenic muscular atrophy (dogs)

　動物の各種疾患のなかには，ヒトの類似疾患の研究に有用なモデル動物として役立つものがある。とくに，ヒトの難病とされている神経筋疾患の原因究明や治療法の開発には，適当な疾患モデル動物がつよく要望され，すでに筋ジストロフィーのマウスやニワトリが開発されている。イヌは飼育の歴史も古く，世界各地で多くの品種が作られているが，品種確立の過程では相当の近交を続けて作出されたものもある。そのために，遺伝性の疾患も数多く知られ，遺伝性神経性疾患についてもいくつかの報告^1〜9）がある。しかし，これらの疾患を持ったイヌは通常の繁殖集団では淘汰されるので，容易に入手できない。

　たまたま，筆者らはヒトの神経性進行性筋萎縮症に類似した症状を示すポインター種の同腹3頭の仔イヌを発見し，それを臨床的，病理学的に検索して，その一部を報告した^11,12）。また，発症したイヌと同腹の仔イヌを入手して，モデル動物として開発するための繁殖も続けている。そこで，これらの発症犬の臨床的，病理学的検索結果と最近の繁殖状況について述べる。

Summary

Three littermates, two males and one female of the pointer breed, five months of age were affected with progressive neurogenic muscular atrophy. They were examined clinically and pathologically. Atrophy was manifested in themuscles of the head, neck, trunk and four limbs. Atrophy was aggravated in the course of disease and the affected dogs became completely tetra-plegic. Fasciculations were observed in most of the superficial muscles. The patella reflex was markedly diminished. Cutaneous sensation was intact. There were no bowel and urinary disturb-ances.