特集 脳のシンポジウム
主題 脳循環
指定発言 脳灌流よりみた脳循環の問題
川北 幸男
1
1大阪市立大学医学部神経科
pp.541
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904344
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脳循環の動態を研究するには,いくつかの方法があげられる。かつては脳灌流法もこれらの方法の1つにあげられたこともあつたが,N2O法や85Kr法が考案されてヒトに用いられるにいたつたこんにちでは,脳循環の動態を研究する方法としての価値はいちじるしく失われたといってよい。これは,動物について研究する場合も同様であつて,とくに脳灌流のための手術的侵襲が大きいことを考えると,灌流脳では脳循環を調節する微妙な機構が障害されていると考えねばならない1)。
以下のべることは,脳灌流実験中に指摘された脳循環の問題であるが,これらはいずれもintrinsic chemicalregulatory mechanismに関することである。第1は肝原性血流調節因子というべきもので,牛赤血球を牛血清アルブミン・リンゲル液・ブドウ糖の混液に浮游させた人工血液でネコの脳を灌流すると,血流量を100ml/100g/min以上に保たねば,脳の機能維持が困難であるのに対し,上述の灌流液を数回肝を通過させて後使用すれば90〜100ml/100g/min,また灌流系に肝を挿入すると,50〜60ml/100g/minの血液量で脳の機能が維持されることが示されている。これは未同定の肝原性の物質が,脳血流量の調節に関与していることを示唆するものと解される2)。
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