特集 脳のシンポジウム
主題 脳循環
指定発言/指定発言 脳血流停止の限界—人工液灌流による極低体温域遊離頭部実験
後藤 文男
1
,
工藤 達之
2
1慶応大学医学部相沢内科
2慶応大学医学部外科脳神経外科
pp.547-549
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904346
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古くより脳の機能と循環代謝の間に密接な関係が予想されていたにもかかわらず,従来のN2O法による報告は,いずれもそれを否定するようなものばかりであつた。そこで,われわれは,感度のより高い脳循環代謝研究法を開発し,この問題の再検討を行なつた。すなわち,人の内頸静脈血および動脈血中のPo2,Pco2,pH,Na,Kならびに脳波,血圧,呼気CO2などをpolygraph上に同時連続記録を行ない,これら諸因子に及ぼす覚醒反応,疼痛刺激音刺激,光刺激などの影響および各因子の相互関係を観察した。
覚醒反応により脳波に低電位速波が現われると,動脈血中諸量には大きな変化がないが,内頸静脈血中Po2は下降し,Pco2は上昇しpHは下降した。これは,脳組織における酸素消費量の増加およびCO2産生量の増加を物語つている。ついでPo2は上昇しはじめ,Pco2は下降傾向をとる。これは,脳組織中Pco2の上昇によつて脳血管拡張が起こり,脳血流増加し,脳に対する酸素供給量が増え,同時にCO2の脳よりの洗い出しが増加したことを物語つている。針で疼痛刺激を与えると,軽度の過呼吸により,動脈血中Po2は上昇しPco2は下降するが,内頸静脈血では逆にPo2下降後上昇しPco2は上昇,pHは酸性に傾いた。
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