特集 脳のシンポジウム
主題 視床の構造と機能
指定発言
中浜 博
1
1慶応大学医学部生理学,精神医研
pp.502
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904335
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岩間教授は外側膝状体のはたらきが大脳皮質視覚領を除去することによりどう変るか,すなわち視覚皮質より外側膝状体へのフィード・バック系のはたらきを明らかにする目的でこの実験を始められたと推察される。昔から脳の研究方法の一つとして脳細胞群に電流を流して刺激する方法がよく用いられているが,この場合はたしてどこを刺激しているか,またその刺激の影響が自然状態に起こつているものと同じであるかどうか疑問がある。すなわち,脳に電気刺激を加えることによりその場所のはたらきを云々することが出来るかどうかということが問題である。脳のはたらきを云々する場合には,なるべく自然状態にしたままで実験を行なうようにすべきて,この観点より脳のある場所を除去しておいて慢性除去動物をつくり,それも動物を固定装置にしばつたりせず,自然の状態において実験を行なう方法がすぐれていると思う。しかし脳のある場所を除去すると,逆行性変性を起こしてくる。したがつて除去したために起こつた変化がフィード・バック系の遮断によつて起こつたか,あるいは逆行性変性のために起こつたか,これを決めることはむずかしくなる。岩間教授は,本研究により脳の除去という研究力法に対し,一つの大切な基礎データを提出されている。
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