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特集 脳のシンポジウム
主題 脳循環
脳循環と脳機能—その生存限界
Circulation and Function of the Brain: The Limit of Physiological Viability of the Brain in a Cat
須田 勇
1
1神戸大学医学部第2生理学教室
1The 2nd Department of Physiology, School ofMedicine, Kobe University
pp.535-541
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904343
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Ⅰ.緒言
動物実験の場合,脳髄機能の標識をなににとるかは問題であるが,いま,脳波をその標識とする。この仮定にたてば,脳循環と脳髄機能の関係についてはつきりといえることがある。それは,脳循環を遮断すると数分のうちに脳髄機能は消失するということである。これはたしかな実験事実であるが,この事実から一挙に中枢神経細胞は数分の血流遮断によつて死に至ると結論するのは早計である。失われたこの脳髄機能が血流再開によつて回復するか否かを決定する要因のうち,最も重要なものは血行停止時間とそのときの脳髄の温度である。この点に関しては,蘇生能な低温限界(温度と時間)の研究と,蘇生可能な低温下での循環停止後の蘇生条件の研究,すなわち,生体の超生と再生に関する生物医学的な探求の結果はヒトについても,ヒト以外の動物についても同じ法則が適用できるという一応の結末に到達している1)。したがって,現状は生物医学的にさらに進んだ臓器保存,生体保存への段階にさしかかつていると考えられる。しかし,それらはあくまでも現象相互の関係を整理したものであつて,生存の過程がなにによつて規定されているかの本質にふれたものではない。
神経細胞が無酸素状態に対して必ずしも弱いものでないことは,神経細胞の培養操作を思い浮かべてみればわかることである。
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