特集 脳のシンポジウム
主題 視床の構造と機能
指定発言 視床の血管性障害の臨床病理学的考察
椿 忠雄
1
1新潟大学医学部神経内科
pp.515
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904337
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以前浴風会において行なつた,老年者の視床の血管性障害についての臨床病理学的研究を報告する。血管性障害についての研究は,発病時期が明確なこと,周囲への圧迫が比較的少ないこと,障害部位が完全に破壊されること,などの利点がある。しかし,それにしても視床の機能を推定することはかならずしも容易ではない。これらの症例の主要症状は,片麻痺,片側運動失調,不随意運動,知覚障害,特有な疼痛である。病巣の位置と大きさにより,これらの症状の組合わせは多彩である。隣接する内包に傷害の及ぼない場合でも,片麻痺の認められる場合があるが,はたして純粋の視床傷害で運動麻痺が起こりうるか否かの結論は慎重を要する。片側運動失調はいずれも深部知覚障害を有するものであるため,これが原因とも考えられるが,病巣部位より見て,赤核視床路の傷害によることが考えられる。不随意運動は,Parkinsonismの場合より不規則かつ粗大な振戦が多く,一般には病巣と反対側に見られる。知覚障害は表在,深部知覚ともに障害されるのが多いが,とくに深知覚障害の強いものが多い。深部知覚のみの低下する場合は,視床前方に病巣がある場合が多く,外側核群腹側部傷害の比較的軽い場合が多い。これに反し,表在,深部知覚ともに障害される場合には,この部は著明に障害されることが多い。
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