Japanese
English
特集 脳のシンポジウム
主題 視床の構造と機能
神経病理学の立場からみた視床の機能
The Thalamic Functions from the Neuropathological Viewpoint
白木 博次
1
Hirotsugu Shiraki
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Division of Neuropathology, Institute of Brain Research, School of Medicine, University of Tokyo
pp.503-514
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904336
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
視床病巣と精神神経障害との関連についての過去の業績は,血管損傷,腫瘍,外傷などによる視床損傷例をもとにしたものが多い。しかし,これらの基礎疾患では,病巣が視床のみに限られ,その特定亜核に選択的かつ両側性に発展することはまつたくありえぬとしてもその可能性はきわめて低い。一方,本報告の対象剖検資料は,パーキンソニズムに対する視床核の2手術例,オリーブ・小脳変性を伴う両側視床変性症の1例,Kuru病,ならびにakinetic mutismまたはapallic syndrome近縁像を示した両側後部視床損傷の1例からなる。以上の資料から,視床核の機能を論ずる場合の困難さと制約は,しかしながら依然として厳残し,以下の諸点に要約できる。
1)病変が厳密な意味で,視床核にのみ局在することはありえぬし,むしろそれが人の神経系疾患のもつ特長とさえいえる。いいかえると視床それ自身は,それと機能的,構造的に密に関連する他の諸核や諸経路と,同時的,継時的に変性する事実こそむしろ重視さるべきではあるが,生前の精神神経障害のうち,そのいずれを視床損傷に対応させうるかは,実際的にはきわめて困難である。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.