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特集 第4回神経化学懇話会
神経化学の技術と方法
神経化学の方法
Methods in Neurochemistry
塚田 裕三
1
Yasuzo Tsukada
1
1東邦大学医学部第2生理
1The 2 nd Dept. of Physiology, Toho Univ. School of Medicine
pp.589-595
発行日 1962年9月25日
Published Date 1962/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903989
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脳の化学組織の研究は既に19世紀から始められて居り,脂質や燐の含有量が高いことなどが注目されていた。然し頭蓋骨に覆われた組織であることや西欧に於ける強いアミニズムにさえぎられ,一般生化学の対象から遠ざけられていた。20世紀前半になり神経系の化学伝達物質としてアセチルコリンやアドレナリンが発見されるに及び神経生理学の上で化学物質の重要性が強く認識される気運が強まつて来た。然しその後の電子工学の進歩は神経系の中で迅速に経過ずる生理現象をとらえるのに有力な技術を提供するにいたり物理的方法に依る電気生理学的研究が大きな発展をとげ化学的方法はおきざりにされたかに見える。然し一方において近代生化学の進歩も脳の生化学的分析を徐々に促すことになり,脳内の不安定物質の存在や,これらの物質が死後変化によつて大きな侵襲を受けることが明らかにされる様になつた。又英国,米国における精神医学研究施設の拡充は脳の生化学的研究を促進するのに大きな役割を果した。一方Sechenov,Pavlovによつて築かれたソビエトの高次神経活動に関するユニークな一連の研究は当然神経活動の物質的背景の追究に向けられこるととなり,ソ連に於ける神経化学の新しい方向を生み出して行つた。こうして精神神経医学の切実な要求の中から脳・神経を材料として生化学的研究を行う一群の科学者が生まれ,1954年には第1回の国際神経化学学会が開催される気運をつくり上げたのである。
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