Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに―記憶と学習の脳内機序の背景―
記憶や学習は神経系の持つ高次機能であって,その仕組みの解明は神経生理学の重要な研究課題である。神経系における記憶や学習という現象は,生理学的には,可塑性(plasticity),つまり生理的刺激に対する生体の反応が永続的な機能変化を示す性質の一つの事象として取り上げることができる。学習は一定の訓練後の生物個体の行動パターンの変化や行動の再編成としてとらえうるし,また記憶は学習の集積によって修正された行動を営む生体の能力,つまりは体験による神経系での情報貯蔵容量として生理学的な実験系に持ち込むことが可能である。したがって,記憶や学習の神経生理学的アプローチは,神経系のplasticityの研究の一部であるということもできる。
神経系がその機能を営むためには,特殊な形態,物質構成,代謝に支えられねばならない。そしてこれらは遺伝的な強い制約と,環境因子により支配されながら発現してくる。ここにいう学習や記憶は個体が体験によって合目的的に営む反応の変化(学習行動)やこれを作動させるための神経系内での情報蓄積能力としてとらえられるものであって,神経系のplasticityの一部にほかならない。これには体験によって比較的可逆的で一過性の変化を示すshort termのものと,ほぼ永続的な不可逆的な変化を示すlong termのものを区別することができる。
In this article, recent advances in neurochemical approaches to learning and memory were briefly reviewed. During the past decade, the reports suggesting the molecular events involved in the storage of information including plasticity in broad sense in the nervous system have been accumulated. The strategies for the research in this field can be categorized as being four methodologies: (A) correlative study, (B) interventive study, (C) memory transfer and (D) neurochemical background of learning disability.
The memory process can be devided into two categories such as short-term and long-term.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.