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特集 第9回脳のシンポジウム
主題:代謝性神経筋疾患
骨格筋における解糖異常の生化学的鑑別診断
Differential diagnosis of muscle disorders due to glycolytic enzyme defects
垂井 清一郎
1
Seiichiro TARUI
1
1大阪大学医学部第二内科
1Second Department of Internal Medicine, Osaka University Medical School
pp.1065-1070
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903573
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I.はじめに
骨格筋における解糖系の異常は,一般に筋グリコーゲンの蓄積を来たすゆえに,糖原蓄積病(glycogen storage disease,glycogenosis)の範疇に包含せしめられている。しかし,筋解糖異常のすべてが,グリコーゲンの沈着を招くか否かの問題については,後に考察したい。現在,世界の学会であまねく用いられている糖原蓄積病の分類は表1のごとくであり1〜3),骨格筋における解糖系の異常に関与するのは,主として,Ⅴ型,Ⅶ型,およびⅢ型の大部分であるが,さらにⅣ型,Ⅵ型の一部も原因となる可能性がある。
骨格筋の解糖系(図1)は,Embden-Meyerhof代謝路が,あたかも幹線道路のごとくその主要部分を占めており,わずかの五炭糖回路の活性が存在するほかは,glucose-6-phosphatase活性を欠いているから,肝臓のごときグリコーゲン→G-1-P→G-6-P→free glucoseという系路は無視し得る。通常の解糖系で遊離のブドウ糖を産生するのは,分岐酵素(branching enzyme)によって1,6-結合のα-グルコース残基が水解された場合に限り,1,6-結合のα-グルコース残基は,グリコーゲンの約7%に過ぎない4)。
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