今月の主題 水と電解質
病態と電解質代謝
心筋・骨格筋の異常
石川 兵衛
1
,
籠島 忠
1
Hyoe Ishikawa
1
,
Tadashi Kagoshima
1
1奈良県立医科大学・第1内科
pp.748-749
発行日 1983年5月10日
Published Date 1983/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218266
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□心筋・骨格筋の興奮・収縮と電解質
電気的興奮 心筋と骨格筋は同じ横紋構造を有するが,筋の興奮・収縮に関与する細胞の微細構造や筋細胞膜の電解質コンダクタンスに差がある.心筋が興奮すると細胞膜のNa+電流,Ca2+電流およびK+電流によって活動電位を生じるが,そのパターンは特殊伝導系と作業筋とで異なり,自動能を有する心筋細胞では静止期にもCa2+・Na+電流による緩徐脱分極が起こる.一方,骨格筋における細胞膜の興奮はNa+電流とK+電流により,Ca2+は脱分極の際細胞内へ流入するが,その流入量は少なく生理的意義も不明である.
興奮収縮連関 筋細胞膜の興奮がT-systemを通じて筋小胞体に伝わると,そこに蓄積されているCa2+が遊離し,それが筋小胞体に作用して自己再生的にCaの遊離を促進する.遊離したCa2+がトロポニンと結合すると,Mg2+とATPの存在下でアクチンとミオシンの滑走が起こり筋は収縮する.細胞膜の興奮が消退するとCa2+は再び筋小胞体に取り込まれ,筋は弛緩状態に復帰する.この筋収縮機構を制御するCa2+の動員は,骨格筋では筋小胞体からの遊離に依存するのに対し,心筋では筋小胞体内Ca2+の蓄積が少ないため細胞外Ca2+の取り込みを必要とする.したがって,心筋の収縮性は細胞外Ca濃度やCa拮抗薬の影響を受けることになる.
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