Japanese
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特集 小脳
小脳性疾患群の神経病理学—とくに臨床像との関連を中心に
The neuropathology of cerebellar disease groups: With special reference to their clinical features
白木 博次
1
Hirotsugu SHIRAKI
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.941-985
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903555
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はじめに
ヒトの小脳疾患の神経病理学と臨床像との対応を論ずる場合,小脳・脊髄変性症が,最適の対象にみえるが,疾患研究の永い歴史にもかかわらず,病因論また病態発生論的にみて,目新しい成果をつけ加えることは,ほとんどできそうにもない。むしろ水俣病に代表されるように,アルキル系有機水銀という明白な原因物質によって見事な小脳皮質損傷と,それにもとづく小脳性失調症が発展する事実に,まず注目したい。また進行性の小脳変性症にほかならぬニューギネアのKuruが,チンパンジーをはじめとする霊長類に,継代的にtransmitできるという経験が,病因論的,病態発生論的立場から,一応,重視できる。
一方,臨床的症候学と神経病理学との間に,著しいdiscrepancyを指摘できる疾患群がある。つまり,剖検後に見事な小脳病変,また小脳や小脳・脊髄路系の系統変性症が確認できるにもかかわらず,生前,小脳症状の記載を欠くか,あっても不明確か,一過性にすぎず,さらにそれが先行していても,その後の経過中に,他の神経障害が発展してくると,小脳症状は次第に消去されていくかにみえる疾患群,たとえば,黒内障性白痴,Hallervorden-Spatz病,Olivo-ponto-cerebellar atrophy,線状体・黒質系統変性症,視床変性をともなう系統変性症などがある。
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