Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
痴呆の精神病理学(psychopathology)の詳細に触れる紙数の余裕はない。ただ,筆者は,単にある横断面で捉えた痴呆の側面を,統計的に処理したり,またその断面で,症度決定を行なう場合,その基盤となっている精神病理学について,そのまま,納得できかねるものである。なぜなら,痴呆は,臨床経過のなかで,正負両方向で変転していくし,また高度の痴呆をもつかにみえる患者も,あるシチュエーションのもとでは,ときに正確な判断を示したり,かなり高度のその他の知的機能を発揮できる場合があるからである。その意味で,痴呆が,その早期から晩期にかけて,縦軸方向で,どう変転していくかという力動的な捉え方をしたSlabyらの業績1)は,一応,注目に価するものがある.ただし,そのなかに,記憶障害をはじめ,神経障害のいくつかの要素をも含めているのは,そのまま賛同できかねるものがある(図1A)。知的機能をはじめとする精神活動は,各種精神活動を,より高次元,より低次元という意味での階層性(ヒエラルキー)のなかで把握していこうとすれば,より高次元の精神活動を示唆している。この事態を,個体発生学に基盤を置く神経系の発達と退行という生物現象と関連させつつ,それらの精神活動を,後者のどこに位置付けできるかという,即物的視点へのアプローチのなかで,筆者の置かれている神経病理学の立場があるように思える。
Abstract
From the neuropathological viewpoint, the localization of foci of the central nervous system, to which the development of dementia and its allied disturbances could be attributed, was differentiated in the following four disease groups: 1. Simultaneous involvement of both the cortexand white matter of the cerebrum; 2. Involvement of the cerebral white matter alone; 3. Involvement of the subcortical gray matter particularly including the thalamic subnuclei; 4. Involvement of the tegmental regions of the brain stem including the reticular formation.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.