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Ⅰ.まえがき
脳の変性疾患の分類が,症候学や病理学の記述によらざるをえない現段階で,ここに視床変性という特殊な一類型を示したからといって,疾患の本質解明にどれほどの意味があろうかという逡巡があるとはいえ,本研究は次の点において意義を有すると思う。
第一は,私どもの経験した視床原発というべき変性症の3例は,系統変性症およびJakob-Creutzfeldt(J-C)症候群との関連において明確に記述されねばならぬということである。J-C症候群は広く解釈され,なかには系統性を示す例もあるし,Stern(1939)その他の視床変性例もここに含められる(Garcin et al. 1963,Kirschbaum 1968)。一方この中にはSubacute spongiform encephalopathyも含まれ,ここからさらにtransmissibleなslow virus感染という,病因に発展の方向を向けた魅力的な考えを受け入れることにより,脳変性疾患の概念が大きな転換を迫られている事態がある。私どもの例を含めた視床変性は,こうした意味を内在するJ-C症候群と,従来の分類による脳変性症との接点にあるといえ,神経病理学分野の新しい趨勢を一体どこまで拡げてよいかを考えるためにも好個の材料であり,そのくわしい分析は,現時点でなされるべき一つの大切な課題であろう。
Three cases of thalamic degeneration (Group-Ⅰ) and 4 case of various presenile disorders ( Jakob-Creutzfeldt syndrome, Pick's disease) with cerebral and thalamic degenerations (Group-Ⅱ) were studied from the morphological, clinicopathological and nosological viewpoints.
1) The thalamic changes on the cases of Group-Ⅰ were an abiotrophic process with old and severe neuronal loss, while those on the cases of Group-Ⅱ comprised glial proliferations with slight to moderate neuronal loss.
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