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特集 神経病理(第13回日本神経病理学会学術研究会より)
シンポジウム:視床—その機能と障害
Ⅱ.病理
神経病理学の立場からみた日本脳炎の視床損傷
Thalamic lesions in Japanese Encephalitis from neuropathological viewpoint
白木 博次
1
Hirotsugu SHIRAKI
1
1東京大学医学部脳研究所病理部
1Department of Neuropathology, Institute of Brain Research, Tokyo University Medical School
pp.229-237
発行日 1973年4月10日
Published Date 1973/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903492
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I.はじめに
1948年の夏,東京都下の日本脳炎(以下,日脳と略称)の大流行時に,演者自身が,そり最急性期から急性期にかけての剖検例の神経病理学5)を手がけはじめてから,すでに25年を経過した。その間,さらに亜急性期,亜慢性期,また67年にもおよぶ慢性期の各剖検例についての体験の積上げ1,3〜12)から,日脳の神経病理学において,病巣の最も重要な局在は,以下に述べるように,視床にほかならぬことを,ようやく自信をもって結論できるようになった。
一方,やはり,1948年の東京都下の日脳の大流行時にあたって,その急性期から遷延期にかけての臨床は,立津13)により,さらに後藤2)によって,同一患者が15年間追跡され,その後遺症,予後,またそれらの変遷などの実態が確立された。これらの業績の最も重要な点は,日脳の急性期から遷延期にかけては,まず運動過多症状群(不随意運動,もがき,転々反側),また運動過少症状群(無動,寡動)のような神経障害が,その前景を占めるが,両者は,その後の経過において,次第に消退しはじめるとともに,むしろ精神障害が,その前面に立ちはじめてくることである。つまり,前者は,衝動的俳徊→落着きなさ,後者は,無為無気力への方向性をとることを意味している。
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