第3回神経病理懇話会 主題 脳腫瘍
〔特別講演〕頭蓋内Meningiomaの臨床
中田 瑞穂
1
Mizuho Nakata
1
1新潟大学
pp.89-116
発行日 1963年1月25日
Published Date 1963/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901951
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神経病理学懇話会の猪瀬会長から,脳腫瘍に関する何でもよいから話すようにというほとんど無条件に寛大なご依頼があつた。
今にして思えば,あつさりと脳腫瘍外科漫談とでもしておいた方が,会員諸兄には却つてご退屈でなかつたかもしれない。私は最初二の足を踏んで然る後お請合いをした時,病理学に深い知識をもとめて居らるる方々に,俗な臨床の漫談というのも失礼であろう,何とか講演らしい体裁だけでもつくろわねばならないという,私にとつては似つかわしくないよそ行き的潜在意識が働らいて,演題のような,もつともらしい題目を御返事してしまつたのである。脳腫瘍全体について述べるには大変な努力がいる。Gliomaはとりとめがない。Adenoma,Neurinomaはあまりに限局に過ぎる。しかるにMeningioma(以下Mと略記)は脳腫瘍として臨床的に一番実際価値も高い。Gliomaと違い,その病理変化が,診断的に捕え易いという数々の特質がある。一体脳腫瘍の外科において外科医はその診断の最も精確なることを歓迎し,不精確なるものに大きい不安を感じやすい。しかるにMは診断の他覚的根拠が数々あり,その上に大部分良性でよく被膜され,脳は圧迫されても腫瘍によつて浸潤を受けないため,もしうまく全別出に成功すれば,健康を回復し,再発を免れ幸福な運命をつかみ得ること,とうていGliomaの比ではない。
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