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特集 肝脳疾患・Ⅰ
肝脳疾患の組織学
Histopathologie der hepatocerebralen Degenerationen
猪瀨 正
1
1横浜市立大学医学部神経科教室
pp.317-326
発行日 1959年1月20日
Published Date 1959/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901676
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1.まえおき
肝脳疾患という概念の定義は,明瞭であるようでいて,実はそれほど一義的ではない。それは肝と脳が同時に侵されるとうことを表わしていることに問題はないが,そこに当然,肝障害が一次的であるか,それとも脳が一次的であるかという原因論が含まれている。しかし,ここでは,そのようなせんさくはさておいて「主病変が肝と脳にあるような疾患」というふうに考えておくことにする。
そのような定義に当てはまる疾患としては,古くから知られていて,今日でも未だに専門的興味の失われていないWilson病を第一にあげることができる。しかしながら,Wilson病は疾患として一義的なものを持つてはいるが,それでも「肝硬変のない症例」の存否をめぐる問題があることは注目すべきことである5)。近時,その病態生理が急速に進展しつつあるのであるが4),本特集号でも論じられているように,特異な銅代謝異常にも,例外の症例があるようである。しかしながら,その精神神経学的臨床病像と,脳と肝の病理組織学的所見からすれば,それは確かに独立した単一の疾患であつて,しかも遺伝的要因が極めて重要な役割を果していることは,云うまでもない。
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